血管腫血管奇形・母斑 │ 浜松医科大学医学部附属病院 形成外科

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血管腫血管奇形・母斑

introduction.01導入

 形成外科で扱う「血管の異常」は、血管性腫瘍(細胞の過形成)と血管奇形(形態の局所的異常)に大きくわけられます。また、「母斑」とは一般に「あざ」と呼ばれる皮膚の色素および形態異常です。

<乳児血管腫>

 血管性腫瘍の代表的な疾患が乳児血管腫(いわゆる苺状血管腫)です。 生後1〜9週で出現し、1年以内に急速に増大、5〜7歳で90%は自然消退するといわれています。しかし病変の部位や大きさにより機能障害をもたらす場合や、整容面で治療を希望される場合は早期治療を行っています。

<血管奇形>

 毛細血管奇形、静脈奇形、動静脈奇形、リンパ管奇形に大きく分けられます。

<母斑>

 最も患者数が多い色素性母斑のほか、表皮母斑、脂腺母斑、扁平母斑、太田母斑、異所性蒙古斑など種類が多く、症候群の一症状である可能性もあるため、その診断については経験と知識を必要とします。

introduction.02ポイント

<乳児血管腫の治療>

 2、3歳頃から自然消退が起こることが知られていますが、顔面や陰部など機能的な問題が生じる場合、全身状態に影響が生じている場合、将来変形を残す可能性があるものなどは積極的に早期治療を開始しています。β−ブロッカー内服・手術療法(全摘・減量手術)・ステロイド療法(外用・局所注射・全身投与)・色素レーザー・塞栓/硬化療法・液体窒素療法などを行います。

<血管奇形の治療>

 毛細血管奇形は色素レーザー治療、その他は手術的治療が中心になります。

<母斑>

 太田母斑や異所性蒙古斑などはQスイッチレーザーによる治療が奏功しますが、その他の母斑は切除を行うことが多いです。単純縫縮できない場合は組織拡張器などを用いて、整容的に満足して頂けるよう努力しています。

introduction.03症例

 照射の範囲や部位、患者さんのご希望によっては、レーザー照射時の疼痛軽減のため、照射約1時間前に局所麻酔の外用薬を使用するほか、全身麻酔下での照射も行っています。

この治療のやりがい

 多くのご家族は出生時から色や形の異常を気にされて受診されます。部位によっては、「学校でいじめに遭わないか」「コンプレックスにならないか」、また「将来悪性化の心配はないか」など心配の種は尽きません。私たちができること、限界があることをご家族に説明しながら、ご家族と一緒に子供さんの成長を見守り、必要な時期に必要な治療を行います。患者数が多く、形成外科医の知識と技術がないと良い治療ができない分野です。ご家族から「やって良かった」「コンプレックスが減った」「QOLが上がった」などの声を聞くとやりがいを感じます。

執筆 診療助教 山田萌絵